第二話
碇シンジはレイを思わずまじまじと見てしまった。
相変わらず白い肌。髪型もあまり変わらなかったが、体型は昔のひたすら細い、華奢な体ではなく、肉感的な、女性らしい体になっていることが、彼女の服越しにでもわかった。制服でもプラグスーツでもない彼女をシンジは初めて見た。
長袖のボタンシャツに、ひざ下のスカート。白いサンダル。
レイは彼の顔を凝視した。
「…碇…くん」
彼女は丸々1分をかけて、その名前を忘却の奥底から掬い出した。
シンジは目の奥が熱くなるのを感じた。
「綾波…無事だったんだね」
「ええ」
視界が潤むのを感じながら、彼は綾波の荷物に目を移した。
中くらいの大きさのバッグ。
「なにしてたの」
「散歩」
シンジはそのあまりにもぶっきらぼうで、あまりにも身近な答えが嬉しくて仕方なかった。
「僕も、散歩なんだ」
二人は近くの喫茶店に入った。注文を済ませると、シンジはこう聞いた。
「ねえ、綾波。今はこの近所に住んでるの」
「そう」
「仕事…とかで?」
「そう」
「どんなことしてるの」
「工場で。派遣の仕事」
彼女の口数の少なさが変わってないのを見て、シンジは少し安心した。
「今までは…どこにいたのさ」
綾波は沈黙を守った。
「綾波になんかあったんじゃないかって、本当に心配したんだよ」
「平気。大丈夫」
綾波がアイスティーを飲む。
「今は寮にいるの」
「ええ」