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雨の日
朝の10時。みゆうは朝食を食べたあと、黄色いレインコートを着て、黄色い長靴を履いて、傘立てからビニール傘を取り出して、一人で団地のアパートをでた。
外はザアザア雨が降っている。道を歩いている人は誰もいない。目の前が白くけぶって見えるほど、雨粒はすごい勢いで地面に落下する。
ボトボトっという音をたてながら雨粒がビニール傘にぶち当たる。
みゆうはおかまいなしにアスファルトをずかずか歩いて行った。
だって今日は長靴をはいているから。
みゆうは大きな水たまりのところまで来た。
幅は1メートル以上もある水たまり。
覗き込むと、絶え間なく落ちてくる雨が丸い波紋をたてていた。
その中にみゆうの姿が映った。
曇天の下の黄色いレインコート。おさげ髪の女の子。
足をそうっと踏み入れてみる。
ぴちゃっ。
女の子は蜃気楼の様に揺れて、レインコートだけが水面で踊った。
公園に来た。
青いあじさいがたくさん咲いている。
雨の日は植物が喜んでいる気がした。
あじさいの花に近づいてみた。
かたつむりが葉っぱの裏でゆっくり動いている。