綾波レイが大人になったら
「…碇…くん」
彼女は丸々１分をかけて、その名前を忘却の奥底から掬い出した。
シンジは目の奥が熱くなるのを感じた。
「綾波…無事だったんだね」
「ええ」
視界が潤みながらも笑いかけた。
「なにしてたの」
「散歩」
シンジはそのあまりにもぶっきらぼうで、あまりにも身近な答えが嬉しくて仕方なかった。
「僕も、僕も散歩なんだ」
二人は近くの喫茶店に入った。注文を済ませると、シンジはこう聞いた。
「ねえ、綾波。今はこの近所に住んでるの」
「そう」
「いつから？」
「一ヶ月前」
彼女の口数の少なさが変わってないのを見て、シンジは少し安心した。
「今までは…どこにいたのさ」
綾波は沈黙を守った。
「綾波になんかあったんじゃないかって、本当に心配したんだよ」
「平気。大丈夫」
注文したアイスティーが運ばれてきた。
「引っ越しの荷物とか大変でしょ。僕、手伝うよ」
「いい。もう済んでるから」
「綾波のことだから、部屋とか散らかってるんじゃないの？」
「引っ越しの時はホコリとかいっぱい出るし、掃除手伝わせてよ」
シンジは食い下がった。なんとしてもレイとの再会を無駄にするわけにはいかなかった。住所さえわかれば、レイとまた会える。
レイを再び失うのが怖かった。
「…じゃあ来たら」
綾波レイが街を歩く。
前を、太陽の光の中を歩く。
すごく変な感じがした。
何か心がざわざわした。
夏の午後３時。
通ったことのない道を歩いて、そしてたどり着いた古いアパート。
中はコンクリートだ。
「ここ」
中は小さなワンルームだった。
シンジのと似たような。しかし唯一の違いは服や本が無造作にほっぽり出され、床が見えないことだった。
綾波はシンジを横にシンク下の備え付けの小さな冷蔵庫を開けた。
「飲む？」
綾波は麦茶の入ったペットボトルをコップに開け、シンジに渡した。
「あ、ありがとう」
綾波レイはおもむろにそのあたりを片付け始めた。
それは床に置いてあったものをテーブルや靴箱の上に移動させるだけだったが。
露わになった白い、やわらかそうな腕。
シンジはコップの麦茶を見つめた。
それにしても予想外だった。
前見た部屋があんなに殺風景だったのに。
これほど多くの服を持っているなんて。
窓にはカーテンがかかっていたが、日が入るレースのカーテンだった。
自分の知るあの重苦しい、深い青のカーテンではなかった。
本当に自分の知っている綾波なのか。
でも６年間もすれば人は少しは変わるだろう。
自分も実際色々変わった。
服は自分で買ったのだろうか。
膝を立てた状態の裸足、ふくらはぎのライン。
シンジは目に焼き付けようとしていた。
■
自分より学歴のいいやつとは付き合いたくない。
その理由は。
自分が寛大な心を持てないから。
見下されるのが怖いから。
自分のことを肯定できない。
でもバカとも付き合いたくない。
自分の学歴より下のやつとも付き合いたくない。
どうしろって言うんだ。
なぜ政経くんを振ってしまったのか。
政経だからだ。
言うことが全て嫌味に聞こえるから。
それはもはや自分の問題だ。
自分が嫌味だと思うからいけないんだ。
嫌味を言うのもいやだ。
自分を守るために。
自分を守るために何かしなきゃいけないのがいやだ。
悲しい。
弱い人間でありたくない。
強い人間になりたい。
もし強い人間であったなら。
政経でも法制でも東大でも同じだろう。
接し方は。
なるべく優しく、相手を尊重するべきなんだ。
誰でも平等に扱うべきなんだ。
強い人間になりたい。
誰にも劣等感を感じない、自分を自分で肯定できるようになりたい。
自分を自分で肯定できたら。
そしたら他人にも寛大になれるんじゃないか。
自分は東大に入れなかった。
東大を受けられなかった。
自分に自信が持てなくて。
早稲田の政経も受けなかった。
慶応の法学部も経済も受けなかった。
自分は今の大学に入った理由もよくわかってなかった。
やりたくないし、まあやってて若干楽しいところもあるんだけど、やってる意味を肯定できなくてストッパーがかかってしまう。
自分は５９キロある。
お腹とか腕とか足に肉がついてる。
でも食べるのがやめられない。
肩幅がでかい。背中が怖い。スタイルが悪い。
今友達は高校の友人ぐらいしかいない。
部活もサークルも入ってない。
今まで入ってなかったしこれからも多分入らない。
でも私はこれら以上のことを全部許す。
これでいいんだ。
私は自分の環境と頑張りの結果だ。
体はそもそも環境の力が大きいし、私は頑張って58.5キロだったんだ。
それはもう仕方ない。
勉強だって一緒だ。私は頑張ってこの大学だったんだ。
頑張ったって言うのは、学力の限界じゃなくて、母親とか環境、不安や精神面における全ての感情を込みでってことだ。
それはしょうがない。
Anxious – Preoccupied Avoidants create endless cycles of self-fulfilling prophecies. They avoid intimacy with their partners but will say ‘I knew it! You don’t love me!’ when their significant others pull away. You can see the irony in these situations; the constant strain ends the relationship.
■
なんかすごく気分が滅入ってる。
なんでだろう。生理中だからか。
昨日は自分は強いんだ、誰にも負けないとか考えてたけど、
強がる必要はないんだ。
私はこのままでいいんだと、認められる日がくれば。
やだなあ。海外行くの。
何が悲しくて休み中に勉強しなければならんのだ。
確かに単位は認められるらしいけど。
私は他の奴らより上のクラスに行ければいいや。
■
昨日はカードを受け取って口座開設をした。
あー疲れた。足がなんだか筋肉痛だ。
59.5kg. ちょっとやばい体重だ。
でもどこに脂肪が行ってるのかわからない。
腹と、太もも、腕と。
でも筋肉なんじゃないかという願望もある。
私自身はいたって健康なつもりだ。
ただ細くないだけで。
でも太くもないと思うんだ。
身長を今度測ろうと思う。
細くもない 太くもないで検索したら、いや、お前はデブだという記事に当たった。
そう考えてる奴はデブなんだと。
はいはい。
私は自殺するからいいんだ。
TOEIC
990点。よかった。今回は絶対無理だと思ったが、さすがTOEIC,今回も満点を授けてくれた。ありがとう。配送が早かった。
昨日は早稲田くんに嫌味を言いすぎた気がする。私の腐った根性わかるかな。これでわかんなかったらかなり鈍感なんじゃないか。いや男は鈍感だからそういうところあるかもしれないけど。
でもちゃんとアドバイスしてあげたし、それで助かったところもあるんじゃないか。
私は威張るぞ。言わせてもらえるだけのことを言う。そのかわりおごってもらったらダメだ。
こいつとは割り勘で行かなくちゃならない。
私はこいつが愚鈍だと思うし、そんな奴の世話になるわけにはいかない。だいたい自分のやってることにやりがいも見出せない奴とは一緒にいたくない。そんな無気力な奴とはなるべく一緒に居たくない。バーカ。
私の人生がいかに楽しいかをアピールしなくちゃ。
こいつ顔もいいし身長もあるのになんでこんな「不器用ですから」みたいな感じなんだろう。モテないタイプのイケメンなのかな。塩顔じゃないし、ちゃらくないし。日本男子っていうか。
最近あまり見ないタイプなんじゃないか。
なんか寿司屋で板前やってそうな。
まあ実際会ってみないとわからないけど。
田舎者ですっていうのは自己満足だよね。
いや、鈍感で不器用なことの説明か。
問題はなぜこいつが私にメッセージくれたかだ。
なんか山田みたいな感じがする。
もしかしたらいい奴なのかもしれない。
明らかに悪い奴ってのは少ないんだ。
前首都大のあいつがいたが、クラスで明らかに浮いてるやつらがそれだ。それも悪いってわけじゃなくて、単に求められてることができない。ただのバカ。
果たしてこれからの人生は虚しいのか
私は中央区に住むのと、犬吠埼に住むのと、同じぐらい幸せかもしれない。
毎日夜景が見えるのと、毎日海が見れるのとどっちがいいかな。
でも夜景って海と同じぐらい綺麗だと思う。
千葉に住みたいな。工場のあるあたり。
やっぱり契島もいいけど、あれはちょっと怖い。
だって船でしか都心（広島だからたかがしれてるけど）に行けないわけじゃん。
しかも契島に配属される保証はない（行きたがる人いないかもしれないけど、逆に他にどうやってこの会社の存在を知るというんだ、営業だったらまず無理）
千葉の京葉線あたりの工場と都心に絶妙に近いぐらいのところがいいんじゃないか。
さて、速報。
このネット上の早稲田の人は政経だという。
手足の末端が冷たい、心拍数が跳ね上がっている、頭がクラクラする。
学歴コンプレックスの身体症状だ。すごいな。これで東大のリケジョとか見たらどうするんだろう。
早稲田政経の人は合計４１９９人。早稲田法学部の人は3460人。
東大は4489人（文系のみ）。東大って人数こんなに少なかったんだ。
慶応の経済、法学部法学科を調べてみる。
合わせて7200。
京大も足しとくか。
文系4530人。
文系で私より上の人は23,878人。
大手企業の求める人数は果たして何人でしょうか。
でも待てよ。
これ４で割らないとうちの学年にならないじゃないか。
就活浪人はこの高学歴さまたちはしないとする。
私より上の学歴の人は5969.5人。
なんだ、大したことないじゃないか。
大手企業はいっぱいある。
いい企業が日本に３００こしかなかったとしても、一つ平均２００人取ればみんな入れる。
６００こあったとしたら、一つ平均１００人取ればいい。（頭悪そうな計算）
大手企業、１１０００個あるみたい。
なんだ、心配することないじゃないか。
まあその中で名のしれてるやつが６００個しかないとしても、まあ大丈夫。
あとごめん、日本ラッド。
胡散臭い会社かと思ったらかなり立派なビルだった。ごめんよ。疑ってごめん。
しかも私は英語もできるし、ちゃんとコミュニケーション取れるし、就職いい年みたいだし、全く心配する必要ないと思う。
もしどこも雇ってくれなかったら（ありえないと思うけど）、教授になればいい。
まあどーんと構えてればいいわけだ。
東大卒にいびられるか？そりゃ入って見ないとわからない。
電通で２４歳の東大女子が自殺に追い込まれたじゃないか。
東大卒ってだけじゃダメなんだ。
女子じゃダメなんだ。
しかもあの人結構綺麗だったのに。
綺麗なのに、女子力がないとか言われて。
じゃー私はどうなんだよ。
学歴もない、美貌もない、もっちろん女子力なんてかけらもない。
なるほど、この人は綺麗だから逆に差別されてしまったのか。
かわいそうに。
いや、かわいそうじゃない。
本人がやめる勇気を持ってれば、こうならなかったはずだ。
エリートはそこんとこ雑草魂がないから困る。
いや失踪したいんだったらしろよ。
死ぬよりは失踪した方がマシだ。
母子家庭でこんな美人で東大行ったのに、全ての困難に立ち向かって勝ったのに、この人を壊したのは人間のクソみたいな上司。
ちょっとありえないだろう。
この人に私のお父さんみたいな存在がいたら、死んでなかったかもしれないのに。
そう考えるとこの人がかわいそうだ。
私も母子家庭で育ったが、最後の最後で父親が現れた。
それだけでも幸運なのかもしれない。
「女子力」というのは「女はこうあるべき」というおそろしい女性差別の言葉だ。
しかも女子自身が使ってる。
私は結婚なんてはなから信じてない。
私はいつだって一人で生きていく準備ができていなくちゃならない。
男性を見つけたいのも、可愛がって欲しいから、セックスして欲しいから、私のエゴを喜ばせて欲しいから。
決して、相手のエゴを喜ばせようとかは思わない。
まあ補助的に、私を気にいるための導入剤的な意味でそうするかもしれない。
でも中心は私、私、私。
私を無条件に愛してくれないんだったらそんな人いらない。
私がいてくれるってことはもうその人にとって最大の喜びであるべきなんだ。
そうじゃないと彼氏として認められない。
学歴っていうのは、文化的、経済的バックグランドの類似性を見せてくれるから、もちろん婚活ではとても便利なんだ。でもこれはニッコマあたりまででいいんだ。あとは性格。
でも結局は企業様様に喜んでいただくためだけじゃねえか。
学歴なんて。
女子力を身につける女子と同じだ。
あなたに気に入られたいから、僕、私、一生懸命お勉強や部活動頑張ったのよ。褒めて。お金ください。いい仕事ください。
って言ってるようなもんだろ？哀れだね。
でも学生にとってはこれが全てなんだ。企業様に認めていただくことが。
「商社マン」とか「機械メーカー勤務」とか自称できるように。
悲しいねえ。
そんな「認めてください」っていうタグに自信とかプライドを抱くことが間違ってる。
むしろ隷属の証なんじゃないか。
だから猛勉強して東大入るなってことか。
隷属の証をひいひい言って稼いで、そして隷属先で死ぬまでセクハラされ、徹夜でやった仕事をボロクソに言われる。
それこそ家畜。
車輪の下。
まあ学歴がいいのに越したことはないけど。
それを隷属の証として使うな。大学の教育で実力を育てろ。
メンタルを育てろ。知識をつちかえ。何が正しいか、何が間違ってるか、ちゃんとならえ。
そんなのわかんないまま卒業したって全く意味ない。
これらのことができない大学は、たとえどんなに世間受けが良くてもろくなことにならないぞ。
楽に卒業できる大学なんてろくなことねえぞ。
大学受験で苦労全部終わり！なんて大学意味ねえぞ。
大学受験で学ぶことなんてほんっとに少ないから。
せいぜい徹夜をする方法とかぐらいしかないだろう。
私は間違ってなかった！
大学行ってまでなんで楽しなくちゃ行けないんだよ、と思った。
バカかよ、なんで大学で苦労しなくちゃいけないんだよ、って私は入ってから思った。
でも今理由がわかった。
ここで学習しないと、あとで大変なことになるからだ。
あのクソみたいな大川の授業。クソみたいなことをメール越しで言ってきて、面と向かっては何一つきついこと言えない大川。
バイト代をちょろまかそうとした大学。
ついていけなかった授業。休学届けを出そうとして受け付けられなかったこと。
友人とした喧嘩。
全部大事だった。
全部に意味があった。
全部、私は苦しみ通したけど、これはあとで苦しんでたかもしれない問題だったんだ。
翻訳、通訳の授業。
今度フランクフルトに一人で行くこと。
怖いけど、私は確実にやり遂げる。
世紀末みたいにひどい人生だったけど、私は今まで進んできた。
最終的には起業しないと一生搾取されるままだから、公務員とか、教授になるか、途中でやめて起業しなければいけない。
死んでたまるか。私は周りの誰よりも人生のことよくわかってるんだ。
誰よりも苦しんでるから、誰よりも先輩なんだ。
私は誰よりもうまくやっていける。
みんなが打たれ弱いから死んでも、私は生き残ってやる。
世紀末でも生き残ってやる。
私は些細なことで傷つくけど、でも治りだって早い。
私を甘く見ないでくれ。
私はこれでも母親を亡くし、子供時代に洗脳され、レイプを二回され、母親に家から追い出され路頭に迷った経験があるんだ。
もう何があっても怖くない。
幽霊だって怖くない。
私の人生の方がよっぽど怖いわ。
それに耐えてきた私。私が怖いわ。
幽霊よ、私を見たら私を怖がりやがれ。クソが。
