やっと、人間らしく

途中で何度も帰ろうかと思った。
一日中選考で、つらかった。
意識高い系の会社。
受かっても行きたくないな。
私にはもっと意識低そうなところの方があってる。
他に来てた奴らもみんな意識たかそうで、少なくとも自分のグループはみんな結構優秀そうだった。
うん、まあ自分のライバルを知れたってことはよかったんじゃないの。

でもやっぱり平凡な感じ。優秀な人はいるんだけど、あの平凡さには我慢ならない。

あの中にはいたくない。

自分は周りの環境が多少悪くても、唯一の存在でありたい。

英語は出来る人ばっかりだった。

別にそいつらの方がよく出来るとかじゃないけど、ただイニシアティブをとって発言してたのがレベル高いと思った。

うん。私はニートになろう。

楽な仕事をなるべく探して。

小さな会社で。

私はコーポレート向いてないな。

翻訳、通訳、教師とか。

日本でドイツの会社に就職しても意味ないって言われた。

うん。ドイツに住もうか。

でも私はやっぱり日本が好きなんだ。

そんなに長く離れてるなんて考えられない。

とりあえず今から生計立てられる仕事を探そう。

自分が特別だ、なおかつ自分が優れていると、言える場所にいたい。

あまり他の通訳翻訳者がいない、中小企業の社内通訳とか。

地獄のような一日。
朝から晩まで選考試験。
私は悟った。ビジネスは向いてないと。
そんな社会の歯車になるなんて無理だと。
私は何を求めてるのか。
自分にしかできないこと。
そんなものは存在しないのかも知れない。
みんな一体どこで「自分は特別じゃない」って気づくようになるんだろう。
私は今までほぼ気づかなかった。
あのトイストーリーのバズが至るあの「自分の代わりはいくらでもいる」「おれはとべないんだ」っていう目覚め。
私は今までそのことから必死に逃げ回って来た。
学校が忙しかったせいである程度ごまかせて来た。
でも、自分が特別じゃないなんてことを受け入れたら、これからいったいどう生きていけばいいんだろう。
でも案外居心地いいのかも。
自分みたいな人はいくらでもいると、自分の人生なんて誰も気にしちゃ居ないこと、自分が野垂れ死のうと、だれも気にしないこと。
それってある意味解放だよね。
応える期待はなく、自分の存在する意味はなく。

世界の優しい無関心に、よりかかってそのまま沈んでいく。

それって案外心地よかったりしてね。

だから留年しても留学しても博士課程まで行っても、目くじらをたてる太陽はどこにもいない。

それってすごく幸せなことじゃない。
この「特別思想」っていうのは母親に幼少期から植え付けられたもので、常にベストでなくてはならないと、私にプレッシャーをかけて来た。
でも母親はもう居ないわけだし、もう捨てちゃっていい、虚偽の思想なんだ。
私は平凡でいいんだ。
特別じゃなくていいんだ。
隣の人より優れている理由を探さなくてもいいんだ。

戦いはもう終わりにできるんだ。