ニンゲンくん−処刑編−

自分がかわいそうだなあと思います。

自分は右も左も分からないうちに仕掛け人に苦しい道へと誘導され、
意思をすり替えられ、望まない道へと進んでしまった。
これからはずっとずっとずっと苦しい。
苦しいだけだ。
自殺しようと思います。
しかしここで来るのが、怒りの感情です。
なぜ私がこんな目に合わないといけないんだ。
私がなんか悪いことをしたのか。
生まれたこと自体が罪なのか。
いや、私は生まれさせられたんだ。
生まれて来たのは自分のせいじゃない。
他人を殺したい。
成功している、何の苦労もしてなさそうな奴らをめった刺しにしてやりたい。
憎くて憎くて仕方がない。
欲を捨てろ、足るを知れと書きましたが、
この生涯の圧倒的な不充足感、耐え難い報われなさ。
どうしてくれようか。
前、抑えきれない怒りの感情が湧いて来たときに、私はこの世界がままならないのなら、文章の中で思う存分やってやろうと考え、暴力をぶつけるためのニンゲンくんというキャラクターを思いついたことがあります。
ニンゲンくんに、また助けてもらおうかと思います。

 

ニンゲンくん−処刑編−

 

今日登場していただくのはニンゲンくんと彼の兄と両親です。
とはいってもみんな最初はただの人形です。
ここに私が命と、意識と、記憶を吹き込みます。
ニンゲンくんは、そうですね、19歳にします。
サッカー部でキャプテンを務めたこともあり、学業も優秀な青年です。
彼の兄は2歳上の、頼り甲斐のあるいいお兄さんです。彼もサッカーが得意です。
お父さんとお母さんはとても仲が良く、ニンゲンくんが帰って来ると一緒に椅子を手作りしてたりするぐらいです。
二人ともいい仕事に就いていて、子供を育てるだけの十分な収入があって、この少子化の時期にも二人も子供を持てる優秀で計画的な人たちです。
家族旅行にもいくし、子供を全面的に肯定してあげていた両親です。
この家族の昨晩やっていたことを考えます。
昨晩、お兄さんは居酒屋のバイトがあったために帰りが遅くなりましたが、
ニンゲンくんと彼の両親はみんなテーブルについて一緒に晩御飯を食べました。
お母さんの得意料理のオムライスです。
「美味しい」「うまくできたね」
「大学の友達がね、(...)」
「今日会社ではこんなことがあったんだよ」
「ハハハ」
楽しい談笑の時です。
みんな食べ終わると一緒にテレビのドラマなんかをみて、
それでニンゲンくんが「いっけない。宿題忘れてた」と言って自分の部屋に戻ります。
残された両親は子供たちの進路の話を夜遅くまでします。
しかし彼らの幸せは長続きしません。

 

彼らは目覚めると、見知らぬ殺風景な部屋の中にいます。
顔に麻袋を被せられ、縄で体を縛られ、磔にされています。
○○
○○
↑こんな感じでお父さんとお母さんが、子供たちに対面する形で配置されています。
口にもさるぐつわをはめられて、叫ぶこともできません。
「ウーッ、ウーッ!」
これが精一杯です。
お父さんは大きな体を揺すって磔から身を解こうとしますが、びくともしません。
お母さんもニンゲンくんもお兄さんも全然ダメです。
私はその光景にニタついています。
私は無言でお父さんに歩み寄り、いきなり袋の上から顔を殴ります。
あんまり手応えがないので、頭を押さえつけてレンガを鼻に振り下ろします。
「ううっ」
麻袋が鼻血で濡れていきます。
私はニヤニヤしながら子供たちの方にちらちらと目をやります。
子供たちは怯えて暴れるのをやめました。
私はなんども、お父さんの顔をレンガで殴りつけます。
勢い余って、磔が倒れます。
私はお父さんの腹を思いっきり蹴り上げます。
お父さんは十字架を背負って、なんとか四つん這いになって立ち上がろうとします。
家族を自由にするために。
私はそのいじらしい努力を踏みにじります。
私は彼の縄を解くと、背骨に金属バットを振り下ろします。
顔の血が止まらず、麻袋は濡れて赤茶けています。
彼の太い腕が私の足を掴もうとしますが、間一髪で逃れ、顔を踏みつけます。
抵抗しようとするのに腹が立ち、スイカ割りのように後頭部に金属バットを振り下ろします。
仰向けにして腹や胸にも全力で振り下ろします。骨が折れる音がします。
私を掴もうとした手を、指先を、靴のかかとで気がすむまでゴリゴリ踏みつけます。
彼はそこで抵抗をやめます。
異常な呼吸をしているのはわかります。
もうそろそろ最後の対面をさせてやろうかと私は思い、私は家族の縄を点検した後、彼の重い体をずるずると家族の方へ引きずって行ってやり、彼の顔の麻袋をパッととります。
最初に見るのはお母さんです。
ギャアーッと彼女はさるぐつわの上から悲鳴をあげます。
私も見てないので、顔を覗き込みます。
まるでいびつな風船のように膨れ上がった顔。
目の周りは青黒い痣になっていて、唇は切れて大きく腫れていました。
まるで、赤ん坊のような。
私はやっと、この人がニンゲンだったのだということを理解します。
私は強いものは愛せないのです。
私は弱った無防備なものしか愛せません。
弱った彼なら私は愛せます。
しかし放っておけば彼が体力を回復させ、私に報復しようとする可能性がわずかにあるので、
私は心を鬼にして、彼を殺さなければなりません。
私は彼の顔を子供たちにも見せてあげます。
私は彼の腫れ上がった耳に、少し大きめな声で、老人ホームのおじいちゃんに語りかけるように聞きます。
「お父さん、意識はありますか。大丈夫ですか」
彼はわずかに頷きます。
「何かお子さんや奥さんに言い残すことはありますか」
彼は呼吸に全ての集中力を注いでいるようです。
彼は、しばらくして、か細い声でぽつりと、
「ごめん」とだけ言いました。
「もういいですか。じゃあ、ごめんなさいね」
私は目一杯力を入れて、金属バットで頭蓋骨を割ります。
これが私のできる、一番人間らしい殺し方なのです。
弱いものを殺さなくてはいけないのは、非常にやるせない気持ちになります。
何回か振り下ろしたところで激しく痙攣し始め、
そして最後にぱたっと止みました。
私は子供たちとお母さんを見ます。
お母さんは泣いているのがわかります。
子供たちも泣いているのかもしれません。
次に脅威となるのはお兄さんです。

今お父さんを殺したばっかりで腕が疲れています。

お兄さんはイケメンなので、顔を見れないのがちょっと残念です。
ちょうど銃殺刑みたいな形になっているので、せっかくなのでタバコを吸わせてから、銃で撃とうと思います。
お父さんのいたところの向かい側にいるお兄さんの、麻袋をとります。
「私はタバコは吸いませんが、あなたは吸いますか」
彼は首を横に振ります。
「今タバコをお渡しするので、なるべく長い間頑張って吸ってください。吸わないとお父さんにしたのと同じようにしちゃいますよ」
私は彼のさるぐつわを外し、慣れない手つきでタバコに火をつけ、それを彼のきれいな唇に持っていきます。

銘柄はハイライト。

彼はそれをくわえて、頑張って息を吸ったり吐いたりしています。

私は声に出して数を数えます。

「1、2、3、4…」

「19、20」

彼は20秒目ぐらいでタバコを落としてしまいました。

「まあいいでしょう。何か言い残すことはありますか」

「なんで…なんで俺たちを」

「理由はないんです。ただ、無性に腹が立ったというだけなんです。私なんかのストレス発散のために、あなたみたいに優秀でかっこよくて素敵な方を使うのは申し訳ないんですが。ごめんなさいね。」

私は麻袋を彼の顔に再び被せようとします。

「お母さん!」

私は彼の胸に手を当てます。

温かいニンゲンの温もりがします。

シャツがびっしょりと汗で濡れています。

私は思わず興奮してしまい、彼のシャツをまくりあげ、お腹にキスをします。

胸から下腹部へとキスしていきます。

彼はくすぐったがり、抵抗しています。

「やめろ!」

彼のズボンのボタンを外し、チャックをおろします。

「現実世界はあれほど醜いのに、あなたは本当にきれいね」

「何言ってるんだ…」

「ううん、なんでもありません」

私は彼のブリーフに顔を埋め、彼のおちんぽにパンツ越しにキスをします。

我慢できず、パンツを下ろしておちんぽに生で食らいつきます。

優しく、しかしまとわりつかせながら舌で愛撫していきます。

「うっ…やめろ」

「きもひいいですか?」

なんとなんと、勃ってきました。

目の前で父親が惨殺されるところを見ておきながら、彼は父親を殺した女に欲情しているのです。

なんて惨めで、なんて気持ち悪い。

私はきれいな彼を心の底から軽蔑しました。

ジュポジュポとしゃぶるうちに彼はどんどん硬くなっていきます。

玉の裏からツーっと先まで舐めます。